在宅患者が増えれば、薬局の利益も同じように増えるのでしょうか?
在宅医療への対応を強化し、患者さんの数が増えることは、薬局にとって重要な成長機会の一つです。
しかし、患者数が増えれば、そのまま薬局の利益が増えるとは限りません。
在宅業務では、処方箋を受け付けて調剤する以外にも、多くの周辺業務が発生します。
例えば、患者さんやご家族への連絡、施設との確認、書類の回収、請求・集金、未収確認、訪問予定の調整、担当者間の申し送りなどです。
患者数が少ないうちは、こうした業務をスタッフ同士の声掛けや紙のメモ、Excelなどで補えることがあります。
ところが、患者数が増えるにつれて、一件あたり数分の確認作業であっても、薬局全体では無視できない時間になります。
在宅業務を将来の収益の柱として育てるのであれば、「患者数を増やすこと」と同時に、
「患者数が増えても業務負荷が比例して増えにくい仕組み」を考える必要があります。
利益を圧迫するのは、目に見える作業だけでない
薬局の業務改善というと、調剤作業の効率化や人員配置など、比較的見えやすい業務に目が向きがちです。
しかし、在宅業務には数字として把握しにくい「見えない事務負担」があります。
例えば、
- 過去の電話内容を探す
- 誰が対応している案件なのか確認する
- 家族から回答があったか担当者へ聞く
- 施設へ返答済みか確認する
- 未回収の書類を探す
- 入金状況を別の管理表で確認する
- 担当者が休みの日に経緯を一から調べる
といった作業です。
一回あたりは短時間でも、毎日繰り返されれば大きな負担になります。
しかも、こうした時間は「患者対応」「確認」「申し送り」などに分散しているため、
薬局側でもどれだけ時間を使っているのか把握しにくいことがあります。
「人を減らす」より先に「探す・聞く・待つ」を減らす
利益率向上という言葉から、人件費削減を想像する方もいるかもしれません。
しかし、在宅医療のように人による対応が重要な業務では、単純に人員を減らせば良いわけではありません。
また、逆を考えれば、単純に人員を増やせば良いわけでもありません。
話を戻します。
最初に見直したいのは、スタッフが本来行わなくてもよい確認作業です。
「どこに書いてあるか探す」
「担当者に聞かなければ分からない」
「誰かの回答を待っているが、その状態が見えない」
こうした時間を減らせれば、同じ人数でも、患者さんへの対応や薬剤師としての本来業務へ時間を振り向けられる可能性があります。
DXの役割は、人員を減らすことではなく、人にしかできない仕事へ時間を戻すことにもあります。
余談ですが、AI活用についても同様のことが当てはまります。
電子薬歴やチャットだけでは管理しにくい仕事がある
調剤薬局には、電子薬歴をはじめとした重要な業務システムがあります。
また、社内チャットなどを活用して情報共有を進めている薬局もあります。
一方、在宅業務では、それらだけでは整理しにくい非薬学的な業務も発生します。
例えば、
「ご家族へ支払方法を確認中」
「施設から書類が届くのを待っている」
「担当者が次回訪問までに確認する」
「連絡は読まれているが、まだ回答が必要」
といった状態です。
チャットでは会話の履歴を残すことはできますが、その案件が最終的に完了したのかを追うことには工夫が必要です。
電子薬歴には薬学的な記録という重要な役割がありますが、こうした非薬学的な業務進捗まで一つの仕組みに無理に集約する必要はありません。
既存システムの役割を尊重しながら、その間に残っている「業務管理の空白」を整理すること が重要です。
患者単位で「仕事」を見えるようにする
一つの方法として、患者さんごとに発生している業務ケースを見えるようにする方法があります。
例えば、
- 何について対応しているのか
- 誰が担当しているのか
- いつまでに対応するのか
- 薬局側の作業待ちなのか
- 患者・家族・施設などからの回答待ちなのか
- すでに完了しているのか
を簡潔に確認できる状態です。
これは、新しい「患者情報データベース」を作ることが目的ではありません。
患者さんに関係して発生している非薬学的な仕事を、最後まで確実に完了させるための業務管理 なのです。
この違いは非常に重要です。
標準化できる仕事と、個別判断が必要な仕事を分ける
在宅業務では、患者さんごとに事情が異なるため、すべてを同じ手順にすることはできません。
だからこそ、標準化できる部分と個別判断が必要な部分を分けることが重要になります。
例えば、書類回収の進捗管理、入金確認、担当者への通知、期限管理などは、ある程度共通の流れを作れる可能性があります。
一方、患者さんの状態に応じた薬学的判断や、個別性の高い対応は専門職が担うべき領域です。
共通化できる事務業務を整理することで、薬剤師や管理者が個別判断へ集中しやすくなります。
在宅患者が ”増える前” に業務基盤を整える
患者数が増えてから業務を整理しようとすると、日々の対応に追われ、改善に使える時間そのものが不足しがちです。
そのため、在宅業務を今後さらに拡大したい薬局ほど、早い段階で現在の業務を確認しておく意味があります。
例えば、次のような問いから始められます。
- 患者が10人増えたら、どの作業が10件増えるのか
- その中に自動化・標準化できるものはないか
- 薬剤師でなければできない仕事と、事務担当者でも対応できる仕事を分けられているか
- 担当者が休むと止まる業務はないか
- 確認漏れや未収など、後から手間が増える業務はないか
こうした確認をすると、単なる「忙しさ」ではなく、改善できる業務構造が見えてきます。
利益率向上は、日々の小さな業務設計から
薬局の利益率は、人件費だけで決まるものではありません。
在宅患者が増えたときに、確認作業や例外対応まで同じ割合で増えてしまう のか。
それとも、標準化された業務基盤によって増加を抑えられる のか。
この違いは、将来の薬局経営を考えるうえで無視できないポイントです。
もちろん、業務をデジタル化すれば必ず利益率が向上するわけではありません。
しかし、スタッフが「探す・聞く・待つ」ために使っている時間を見直し、
薬剤師が専門性を発揮する仕事へ時間を振り向けられる環境を整えることは、
将来の収益性改善につながる経営基盤の一つになり得ます。
私たちプルーゲンでは、調剤薬局DXを単なるシステム導入ではなく、
「在宅業務が増えても現場負担が比例して増えにくい仕組みづくり」として考えています。
在宅患者を増やす施策と同時に、「増えても回る薬局」をどう作るか。
これからの在宅薬局経営では、その両方を考えることが重要になってくるのではないでしょうか。